2025年6月に成立した、独立行政法人男女共同参画機構法※によって、国立女性教育会館は「男女共同参画機構」に゙改組され、「センター・オブ・センターズ」として、地域の女性センターを後押しすることになっています。しかし、このような政策が、人間の権利を日本社会で向上させることになるか大いに疑問です。
市民による自律的自発的学習こそ、人間の権利を向上させる力になるとの視点が欠けていないでしょうか。「機能強化」として、国立女性教育会館の役割として、情報集約、その中枢的プラットフォームづくり、地域センター職員研修の統括的プログラム開発はじめ、行政的合理性の点では、確かに、既存の行政組織「機能強化」政策と合致しているのでしょう。しかし、国立社会教育機関に行政組織「機能強化」を持ち込むのは根本的な誤りではないでしょうか。
「新しい資本主義」の名の下での「女性版骨太の方針2022」から今日までの、政策立案過程で合意されてきている、潜在的な統制的、管理的志向そのものが、「人間の権利」の根本原理である、人間の個人としての尊厳に反するものになっていないでしょうか。「男女共同参画」の名の下で、この根本原理を脅かしていることに、立案にかかわった人たちには見えずに来たのでしょうか。
これまで、女性の権利が保障もされず、侵害に対する確実な補償制度も整っていない日本社会にあって、国立女性教育会館における宿泊、研修を通して、市民、そして、当事者女性たちが、培ってきたインフォーマルなしなやかな対抗力こそ自由に開放すべきではないでしょうか。今回の「機能強化」政策で議論されてきた具体的な方向は、これまでどおり、日本社会で、人間の権利を後退させる「上からの統制・管理」をさらに拡大するものになる危険性が大きいものです。